スタイリスト池田尚輝がこよなく愛するシルクの持ち味。
アウトドアギアの一番の理解者は実践者であるのと同様に、シルクの本当の魅力は、袖を通した人にしかわかりません。「THREAD,MOUTH AND THE MOON」の服について、スタイリスト池田さんの話を伺いました。
Profile
池田尚輝/スタイリスト
1977年、長野県生まれ。スタイリスト坂井達志氏に師事し、2000年独立。メンズを中心に、雑誌やウェブ、広告やブランドカタログ等幅広く活躍。上品なビジネススタイルから、趣味でもあるアウトドアを生かしたスタイル、トレンドをおさえた芯のあるカジュアルスタイルまで、多様なスタイルを生み出す。
シルクは着て体感する、不思議な素材。
ーシルクの服はお持ちですか?
池田:結構ありますよ。シルクシャツを4枚、パンツを一本、あとはシルクのスウェットとか。どれも微光沢で、一見シルクとはわからないくらいのものばかり。
ー池田さんの場合は、趣味のアウトドアから、もしくはファッションからシルクを着るようになったんですか?
池田:どっちだったかな。でも10年ぐらい前にもシルクを着ていた時期があったので、その時からシルクの良さはわかってました。実際に袖を通してみたらその良さを実感したんですね。基本的に温かいんです。
ー温かいというのは?
池田:着ると“接触冷感”がまずあって、その後で温かく感じる。気温20度前後とかくらいの気温で、T シャツ1枚だと困る時に長袖として着ます。
ーちょっと不思議な素材ですよね。
池田:そうそう。着て体感していく素材ですよね。さきほど外でこのシャツを着て撮影していたときに、雨でシャツにシミが点々と出来ていたんですけど、すぐに乾いていました。あれくらいすぐ乾くっていうのは、吸放湿が優れているということ。だから、肌をドライに保ってくれるから下着としても着れる。しかも、上質で肌触りが気持ちいいなと。
池田:だから、布なのに不思議にストレスがないんですね。
コロナが加速させた、着心地への欲求。
池田:客観的にみると、どうやら自分は着心地にはこだわるタイプのようです(笑)。靴下とパンツと靴の関係とか、インナーと上に羽織るものや被るものの関係とか、肌に触れるものとの合わせるものの組み合わせがある程度決まっているんです。決まっているものが手元になくて、別のもので間に合わせようとすると、すごく後悔する。着心地への感度を、立たせてしまってるんだなと。
随所にクラシックなデザインが施されたシャツ。
ーシルクものは、いつ頃着ることが多いですか?
ーデザイン面ではどうでしょうか?
池田:あとはボトムスは、こういうトラウザー(写真上)のような、しっかりとしたものを合わせるとより落ち着いた感じになるし、カジュアルだったらオーセンティックなチノでもいいかもしれない。この袖口もかなりムードのあるデザインですよね。こうやって折り返すのも遊びがあっていいのかなと。
デザインも質もよい。けどボロボロになった服の活かし方。
ー今の時代の服は、デザイン面、機能面どちらもよくないとダメなのかなと思うんですが?
池田:コロナで自粛中に、いろいろな私物を自撮りするという企画があったんですが、ある方がすごく品質がよくてデザインも好きだけど、もう着すぎてボロボロになった服を。外着ではなくて、部屋着として使っているのを見たんです。「この朽ちかけなのがいい。これは質のいい服じゃないとできないことだ」って言っていて、まさにその通りだなと。
ーそれは面白い考え方ですね。着るシーンを変えて再生する、みたいな。
池田:このシャツを買う時に、何年かは外着として着倒して、その後ヘロヘロになったらゆくゆくは最上のパジャマにしようと考えることもできますよね。元々着心地はいいし、シルエットも気に入っている服。それがラフに扱えるくらいの段階になったら、そういう使い方で再生させる。今年は一張羅だけど、何年か後に最高の部屋着にするみたいな。本当に気に入っている服がコンディション的に着れなくなった時に、どうすればいいんだろうって思っていた自分にとって、これは発見でした。